がらくた(5)

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楼主 2020-03-25 13:08:16
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空白


一晃动心儿就潮潮的




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夫との情事は、私の人生におけるもっとも突飛なできごとだった。何というか、高層ビルの屋上から飛びおりてしまうみたいなことだったのだ。飛びおりたら死んでしまうとばかり思っていたのに、私の背中には羽根が生えていて、なんだ、飛べるんじゃないの。というような。

和丈夫的爱情是我人生中最为离奇的事件。怎么说呢,就仿佛从高楼大厦的顶层纵身跃下。一心以为跳下去会死,但没想到后背竟然生出了翅膀。什么啊,这不是能飞嘛!


だいたい私は、自分がたった一人の男だけを愛するようになるとは思ってもいなかったし、世の中の、自分がたった一人の男だけを愛していると言い張る女たちはみんな、嘘吐きか馬鹿者かのどちらかだと思っていた。結婚は、恋愛という甘い砂糖で飾られた保身だとしか思えなかった。保身を計るのは、悪いことではないにしても。

原本从没想过自己竟然会只爱一个男人,我曾以为世间坚称只爱一个男人的女人,不是骗子就是傻瓜。我以为结婚不过是用恋爱这甜蜜砂糖做装饰的自保,尽管寻求自保也不是坏事。

もし七歳の私や十四歳の私、二十六歳でも三十二歳でもいいのだが、ともかく夫と出会う前の私に訊くことができたら、自分が結婚するなどということは、いつか自分がフィギュアスケートの選手になって、氷上でくるくる回る、というのとおなじくらい想像ができない、とこたえただろう。

假如可以问问七岁的我或十四岁的我,或者二十六岁和三十岁的也可以,总之倘若问问和丈夫相遇前的我,我也许会回答,自己结婚这件事,就像有朝一日自己成了花样滑冰选手,在冰面上旋转一样无法想象。


幾つもの恋をしてきたし、その男の人たちを、私は今も愛している。たとえば偶然再会し、その気持ちを伝える機会がやってきたら、言葉も体も何一つ惜しまず、私はそれを伝えるだろう。

我经历过若干次恋爱,这些男人我现在依然爱着。如果偶然和他们重逢,有机会传达心意,我会毫不吝啬自己的语言和身体。


三十七歳の夏に、私は夫と結婚した。いまから八年前だ。私たちの結婚は、それが何であるにせよ、保身ではなかった。そして、私は夫に所有されることによって、はじめて解放されたのだった。

三十七岁那年夏天,我和丈夫结了婚。现在来说是八年前。不管我们的婚姻是什么,都不是自保。我被丈夫拥有后,才获得了解放。

夫とは、仕事を媒介として知り合った。私は翻訳家だが、専門は美術史で、美術関連の催し事の、通訳とかキュレートとか、翻訳以外の仕事も多い。夫のつくっていたあるテレビ番組の、通訳およびコーディネートに駆りだされたのが出会いだった。一年後には一緒に暮らし始め、その半年後には入籍した。

我和丈夫是以工作为媒相识的。我是翻译,专攻美术史方面,笔译之外的工作也很多,比如与美术相关的活动的口译或策展等。丈夫制作的某档电视节目,我被拽去做了口译和协调人。我们因此相遇,一年后开始共同生活,再过半年后正式登记。


彼女の名前がミミだとわかったのは、海辺に設(しつら)えられた簡素なバーで、すこし話をしたときだった。午後で、母は部屋で昼寝をしていた。海は、いっそ気味ないと思われるほど、水が澄みきっていて穏やかだった。三十分ばかり泳いだあとで、バーに行くとそこに彼女と父親がいた。

在海边的简易酒吧里聊了会儿,我得知她的名字叫咪咪。下午,母亲在房间午睡。大海清澈平稳,愈加乏味。我游了大概三十分钟,去了酒吧,在那儿碰到了她和她父亲。

「こんにちは」

にっこりして、私は言った。水着にローブを羽織っただけの恰好で、びしょ濡れの髪と砂だらけの足で。

「ゆうべはごちそうさまでした。ワイン、とてもおいしかった。」

“您好。”我笑嘻嘻地说道,我只在泳衣外披上了浴袍,头发湿漉漉的,满脚沙子,“谢谢您昨晚的款待。葡萄酒非常好喝。”


彼女の父親もにっこりした。私はカウンター席に座ったが、それは店内に一つだけあるテーブル席の彼らと、背中合わせになる位置だった。天気、気候、滞在日数、日本ではどこに住んでいるのか。こういう場合に人が話すのであろうと思われることを、私たちは話した。あるいは他の宿泊客たちについての軽口ーー迫力のある肉体、金色の指輪に腕輪に首飾り、腕時計。中年以上のカップルばかりなのだが、皆仏頂面(ぶつちょうづら)でいながら、不思議な仲のよさを見せつけてくれているーーを。あいだに小さな笑い声や相槌をはさみながら、ぽつぽつと私たちは話した。

她父亲也一笑。我坐在吧台座位上,同坐在店内唯一一张桌子边的他们背对背。天气、气候、停留几天、在日本住哪儿。这种场合人们也许会聊的事,我们都聊了。或者开开酒店其他客人的玩笑,比如他们扣人心弦的肉体,他们金色的戒指、手链、项链、手表,或者虽然都是已过中年的情侣,大家又一脸严肃,却表现出令人不可思议的恩爱。我们有一句没一句地聊着,中间夹杂着轻轻的笑声和附和。

彼女は水着にパレオをまいた姿だったが、髪も体も乾いていて、爪先から塗ったばかりらしいエナメルの匂いがした。反対に、父親はTシャツにジーンズだったが、シャワーを浴びたばかりのようにの濡れた髪をしていた。

彼女が毎朝一人で砂浜に来るのは、父親がべつなビーチにサーフィンをしに行っているからだ、ということもこのときにわかった。

她在泳衣外围着沙滩巾,头头发和身体却是干的,指尖散发出刚涂完指甲油的味道。相反,她父亲虽然是T恤加牛仔裤,却像是刚洗过澡,头发湿漉漉的。

那时得知她每天清晨独自来沙滩,是因为父亲去另一处海滨冲浪。


「おいでって言うんですけど、ここが気に入っているらしくて」

父親はそう言って笑った。美しいというのではないが、感じのいい笑顔だ。やさしそうな男性で、ひきしまった体型をしているし、きっとミミの自慢の父親なのだろうと想像した。

“叫她过去,可她就喜欢这边。”

她父亲笑了。笑容不怎么漂亮,给人的感觉却很好。他似乎是个温柔体贴的男人,身材结实。我想他一定是让咪咪自豪的父亲。


「ミミ?ずいぶん変な名前ね。どんな字なのよ。」

部屋に戻ると母はもう起きていて、本を読んでいた。バーでのできごとを話すと、そう言って鼻にしわを寄せた。

「知らない。彼女に名前を訊いたわけじゃないもの。彼女の父親が、そう呼んでるのを聞いただけだから」

“咪咪?这名字太奇怪了。怎么写啊?”

回到房间,母亲已经起来了,在看书。说起酒吧的事,她蹙起鼻子。

“不知道。又不是跟她问的名字,只是听她父亲这么叫她。”

泳ぐのは好きなのにーー。手足を大の字にひろげ、私はベッドに倒れこむ。泳ぐのは好きなのに、三十分も泳ぐとぐったりしてしまう。

「父親は何ていう名前なの?」

「知らない」

明明喜欢游泳,我手脚摊成大字,倒在床上想。明明喜欢游泳,但游个三十分钟就筋疲力尽。

“她父亲叫什么?”

“不知道。”


重たい腕を持ち上げ、顔の上に乗せた。部屋のなかはエアコンがきいており、涼しくて薄暗いが、それでもこうすると安心するのだ、昔から。

「でもジントニックをのんでたわ。ママがお水みたいに薄いって言ったあのジントニックを、とてもおいしそうにのんでた」

思いだして私が言うと、母はふんと鼻を鳴らした。

我抬起沉重的手臂放到脸上。房间里开了空调,凉爽而微暗。这么做我会安心,以前就是这样。

“但喝的是金汤力,妈你说像水一样淡的金汤力,他似乎觉得非常好喝。”

我想起来,说道,母亲哼了一声。

「洗いたみたいなTシャツを着てた。近づくと洗剤の匂いがしたの。古ぼけて、色あせたTシャツだったけど清潔そうだった」

「あんたには匂いばかりかいでいるのね」

ぴしゃりと言われ、私は言葉につまった。

「子供のころからそうだったわ。あんたは匂いばかりかいでた。」

「匂いは現にそこにあるんだもの」

小さな声になった、言い訳をするみたいに。いずれにしても、と、母は言った。

「いずれにしても、今度もしレストランであの人たちに会ったら、こちらがワインをあ差し上げなきゃならないでしょう」

でも、その機会はしばらくめぐって来なかった。というのも、その夜は、母が疲れたから夕食はルームサービスで済ませたいと言いだしたからで、次の夜は、どちらのレストランにもあの父娘(おやこ)の姿がなかったからだ。

“穿着刚洗过的T恤,离近了能闻到一股洗衣液的味道。T恤虽然旧了,褪了色,却很干净。”

“你只会闻味道。”母亲厉声说道,我无言以对。“你从小就这样呀,只会闻味道。”

“因为味道实际就在那里。”我声音低了下来,如同辩解一般。

“不管怎样,”母亲说,“不管怎样,下次在餐厅再遇到他们,咱们得送人家一瓶葡萄酒。”

但是,机会却有段时间没有降临。因为那晚母亲说累了,晚饭叫了客房服务。接下来的晚上,两家餐厅都没有那对父女的身影。

空白

朗读:haku

来源:<がらくた>ー江国香織(新潮文庫)

《爱,无比荒凉》-江国香织(南海出版公司)

译者:李洁

编辑:又见橙子


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